| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-071

葉緑体SNPによるブナの系統地理学的な研究−分布域全体をほぼ網羅したハプロタイプ地図の作成−

*高橋誠(林育セ),原正利(千葉中央博物館),藤井紀行(熊本大院自然科学),陶山佳久(東北大院農),津田吉晃(森林総研),小山泰弘(長野県林総セ),片井秀幸(静岡県農技研森林研セ),小谷二郎(石川県林試),斎藤真己(富山県林技セ),上野満(山形県森研セ),伊藤聡(山形県環研セ),小山浩正(山形大農),西川浩己(山梨県森林総研),小澤創(福島県林研セ),宮崎祐子(奈良県森技セ),瀧井忠人(和歌山林試),和田覚(秋田農技セ森林),島田博匡(三重県科技セ),花岡創(岐阜大院連農),吉丸博志,松本麻子(森林総研),渡邉敦史,武津英太郎,岩泉正和(林育セ),福田陽子(林育セ北海道),橋本光司(林育セ関西),戸丸信弘(名大院生命農)

森林へのニーズの多様化や環境への意識の高まりに伴い,広葉樹植栽の機会が増大してきたが,苗木に用いる種苗の地域特性にまで配慮がなされることは少ない。広域での無秩序な種苗の移動は地域固有の遺伝変異を乱す一因であることから,近年では広葉樹の適切な種苗のあり方について検討され始めている。ブナは,冷温帯落葉樹林の代表的な樹種であると共に,すでに多くの系統地理学的な研究情報が蓄積されており,このような問題を検討するのに適している。

近年,多くの森林樹木で葉緑体のDNA多型を用いた系統地理学的研究が進められており,葉緑体のDNA多型はしばしば明瞭な地域間分化を示し,地域ごとの固有性を把握するのに適していると考えられる。本研究では,ブナの天然分布域全体をほぼ網羅したハプロタイプ地図を作成するために,全国の380地点から採取した2300個体について,SNPマーカー等により葉緑体ハプロタイプを同定した。

ハプロタイプは地理的構造を持った分布パターンを示し,東日本と西日本では遺伝的に明瞭に異なったハプロタイプが分布していた。また,東日本では日本海側と太平洋側を代表する2タイプが広域に分布していることなどが明らかになった。

日本生態学会