| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-071
森林へのニーズの多様化や環境への意識の高まりに伴い,広葉樹植栽の機会が増大してきたが,苗木に用いる種苗の地域特性にまで配慮がなされることは少ない。広域での無秩序な種苗の移動は地域固有の遺伝変異を乱す一因であることから,近年では広葉樹の適切な種苗のあり方について検討され始めている。ブナは,冷温帯落葉樹林の代表的な樹種であると共に,すでに多くの系統地理学的な研究情報が蓄積されており,このような問題を検討するのに適している。
近年,多くの森林樹木で葉緑体のDNA多型を用いた系統地理学的研究が進められており,葉緑体のDNA多型はしばしば明瞭な地域間分化を示し,地域ごとの固有性を把握するのに適していると考えられる。本研究では,ブナの天然分布域全体をほぼ網羅したハプロタイプ地図を作成するために,全国の380地点から採取した2300個体について,SNPマーカー等により葉緑体ハプロタイプを同定した。
ハプロタイプは地理的構造を持った分布パターンを示し,東日本と西日本では遺伝的に明瞭に異なったハプロタイプが分布していた。また,東日本では日本海側と太平洋側を代表する2タイプが広域に分布していることなどが明らかになった。