| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-072

生育地の孤立・分断化によるエッジ効果が林床性多年生草本の個体群動態に与える影響

*山岸 洋貴(北大・院・環境科学),富松 裕(ブリティッシュ・コロンビア大学),大原 雅(北大・院・地球環境)

生育地の孤立・分断化は、個体群の直接的な減少をもたらすだけではなく、生育地環境の変化を通じて残存個体群の存続可能性に影響を及ぼすと考えられる。環境条件は、外部環境の影響を受けて生育地の境界部(エッジ)で大きく変化することが知られているが、この「エッジ効果」が個体群動態にどのように影響しているのかを具体的に明らかにした例は少ない。本研究は森林の伐採によるエッジ効果が林床植物の個体群動態に及ぼす影響について明らかにすることを目的として行なった。北海道十勝平野では、1880年代より行われた開拓により、周囲を道路や畑で分断された落葉樹林が数多く点在する。このような森林の林床に一般的に生育する多年生草本オオバナノエンレイソウの2個体群を対象に、個体群内の林内と林縁にそれぞれ調査区(1m×1m)を複数設置し、調査区内の個体の生活史段階および成長量を4年間(2003−2006)追跡調査した。得られたデータから推移行列モデルを作成し個体群成長率(λ)やλの差に寄与する生活史過程に関する解析を行った。また林縁と林内における同じ生活史段階内の動態を評価するために成長量の解析を行った。その結果、λは年によって変動したが、両個体群ともに林縁の方が林内にくらべて低い傾向が見られた。この林内と林縁間のλの差は、個体群や年により異なる要因によって生じていた。また開花1個体あたりが生産する実生の数は林縁の方がより少ない傾向を示したが、これらは必ずしもλの差に大きく寄与しているわけではなかった。これらの結果より、生育地の孤立・分断化によるエッジ効果はλを減少させる可能性があることが示され、またその影響は個体群によって異なる生活史過程を介して生じることが明らかになった。

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