| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-073

土壌栄養塩がパッチ状に分布する環境下でのホソムギ(Lolium perenne)個体の資源探索:根長・根重・SRLおよび個体成長の経時変化

*中村亮二,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理)

土壌栄養塩が局所的に集中するパッチに植物の根系が到達すると、根系はパッチ内で様々な形態的・生理的反応を示す。しかし、パッチ到達以前に根系が示す資源探索についての知見は限られている。そこで本研究では、一定量の遅効性肥料がパッチ状に分布する条件(パッチ条件)下と、均質に分布する条件(均質条件)下の植物個体の成長を比較し、次の予測を検討した:(1)パッチ条件下でのパッチ到達前の個体成長は均質条件下よりも小さい、(2)パッチ条件下の個体はパッチに対して選択的に根系を伸長させる、(3)パッチ条件下の個体は根系のSRL(根重あたりの根長)および地上部重に対する根重の割合を増加させる。

ホソムギを用いて56日間の栽培実験を行なった。2枚のガラス板の間に砂の層(幅18cm×高さ27cm×奥行き0.3cm)を作り、その中央に個体を移植した。パッチ条件下では、個体を移植した場所から3cm離れた場所に栄養塩パッチを設定した。10反復分の植物体を14日おきに刈取り、地上部と根系に分け秤量した。7日おきに根系観察も行なった。

移植から28日目以降、個体重はパッチ条件下で有意に小さかった。パッチ条件下の個体は水平および鉛直方向に有意に長く根系を伸ばした。また水平方向への根系の平均的広がりは3cmを超え(56日目)、栄養塩パッチに到達可能な距離にまで伸長したが、根長・根重はパッチに対する選択的な成長反応を示さなかった。28日目以降、パッチ条件下の個体はSRLおよび地上部重に対する根重の割合を有意に増加させていた。

以上の結果から、パッチ到達前のホソムギ個体は、パッチ外の貧栄養環境に対する可塑的反応を示すが、その個体成長は均質環境下を下回ることが分かった。

日本生態学会