| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-075

千葉県小櫃川河口干潟周辺におけるヨシ(Phragmites australis)の地上部シュート成長様式

西尾孝佳(宇都宮大・雑草セ)・Siegmar W. Breckle(University of Bielefeld, Germany)

温帯域の水辺環境に広く分布するヨシは,半乾燥地域における塩湿地,塩湖周辺などの塩集積環境から,一般的な湿地などの淡水環境まで,幅広い塩環境で生育できる広塩性植物として知られ,その生理的な耐塩性機構について多くの研究がなされてきた。このようにヨシが幅広い塩環境条件下で優占できるひとつの要因としては,各ラメットの地下部で作用する耐塩性機構に加えて,ラメットの配置やラメット間相互作用による成長の最大化が重要であると考えられる。そこで本研究では,千葉県小櫃川河口干潟周辺において,ヨシの塩環境変化に応じたラメット構造の変化を明らかにするために,ヨシの地上部成長様式の解析を行った。調査は,河口干潟内で海水の影響を強く受ける,地理的に相互隔離した7つの汽水産個体群と,河口干潟周辺で,常時湛水する放棄水田に分布し,地理的に相互隔離した7つの淡水産個体群において行った。各個体群では,個体群の辺縁に相当する拡大部分と,中心部分それぞれにおいて,無作為に設定した1m×1mの調査区の当年生桿数,当年生枯死桿数及び,各桿の地上高,基部径,葉数,枯死葉数,節数などを経時的に測定した。その結果,a) 桿サイズ,節数は淡水産個体群で不均一であったのに対し,汽水産個体群では均一に推移した,b) 淡水産個体群では生育期間を通じて随時,新規桿を発生するの対して,汽水産個体群では春に一斉かつ多量に桿を発生後,桿の新規発生は限定的であった,c)汽水産個体群では節数と地上高に高い相関があるのに対して,淡水産個体群では相関が低かった,等の相違が示唆された。

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