| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-082
西日本の平野部に成立する照葉樹林は毎年のように台風の影響を受けており,照葉樹は台風攪乱に適応した生活史を持っているものと考えられる。例えば台風攪乱後の更新動態は各樹種の個体群維持に重要な役割を持っていると考えられるが,構成樹種間の種特性や種間差を定量的に解析した例は少ない。そこで,宮崎県綾町の成熟した照葉樹林に1989年に設置した4haの長期固定試験地のデータを使って台風後の主要構成種の生活史パラメータ変化について解析し,各樹種の特性について生活型や分類群との関係について整理した。使用したデータは1989,91,93,95,97,2001,05年の7回の毎木調査データ(胸高直径5cm以上)である。綾照葉樹林には毎年のように台風が接近するが,1993年9月に来襲間隔が約100年と推定される巨大な台風(T9313)の直撃を受け,試験地の林分は大きな被害を被った。本研究では7回の毎木データのうち最初の2回を台風攪乱前,5回を台風攪乱後と定義して解析を行った。
胸高直径5cm以上個体の年間死亡率は高木層ではアカガシ,タブノキ,シイに,亜高木ではイヌガシ,バリバリノキ,シロダモに台風による明瞭なピークがあった。一方直径5cmへの年間加入率は台風後に高まった樹種が多く,樹種によりそのタイミングが異なった。林冠木ではシイやタブノキは台風後すぐに加入率が上がったが,アカガシやウラジロガシでは遅れて加入率の上昇が見られた。亜高木ではヤブニッケイに比べてイヌガシやバリバリノキの加入率上昇は遅かった。高木層と亜高木層で優占するイスノキとサカキは死亡率,加入率ともに低く明瞭な変化は見られなかった。このような反応の種間差とその生活史との関連はたいへん興味深い。