| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-084

タケ類の一斉開花直前の個体群構造ーインド・ミゾラム州におけるMelocanna baccifera

*齋藤智之(森林総研木曽),池田邦彦(京大農),C.H.モンプイヤ(ミゾラム州園芸省),陶山佳久(東北大院農),西脇亜也(宮崎大農),蒔田明史(秋田県大),柴田昌三(京大フィールド研)

タケササ類は長年の末に一度一斉開花し、枯死する特異な生活史を持つ。本研究はこれまで未知であった一斉開花前後の個体群構造や遺伝的多様性の変化について比較調査し、なぜ一斉開花習性が進化したかを解き明かすための研究の一端としたい。

48年に一度一斉開花することが知られているタケ類Melocanna bacciferaが2007年に開花するというので、開花直前の生態的調査を行った。調査はインド東北部のミゾラム州サイランにおいて長期間保存されている竹林で行った。地上部の調査は20X20mの長期観察用固定プロットを設定して毎竹調査を行った。地下部は4X4mの堀取りプロットを設定して地下部の接続関係を調べた。全ての稈からは葉を採取し、分子生態学的手法を用いてクローン識別を行った。

2005年の稈の齢構成では新規加入稈が他の齢と同等数発生したが、2006年では林冠に達する太い稈はほとんど発生せず、細い萌芽稈が多数発生した。これらはほとんど花茎であった。ササに関しては一斉開花の直前に稈を出さないと言われているが、それが証明された結果である。Melocannaの地下部構造は地下茎が連軸型に出現し、地下茎の長さによって稈が株状に見えたり、散在したりする。地下では個体間の地下茎が複雑に入り組んだ網目状になり群落を形成していた。クローン識別によるとプロット内には24クローンが見られた。一斉開花前年には数稈だけが開花したが、これらは複数のクローンに由来し、各クローン内には非開花稈が卓越していた。

得られた結果はこれまで未知とされた開花前の現象である。この群落では実際に2006年12月下旬からほとんど全ての稈が一斉に開花し始め、現在次世代の更新が始まっている。

日本生態学会