| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-092

フェノロジー特性を利用した土地被覆分類手法の検討

酒井徹,粟屋善雄,高橋與明,古家直行(森林総研)

土地被覆分類は、陸域における衛星リモートセンシングの分野で最もよく行われるアプリケーションの一つである。最近では、地球温暖化問題と関連して、炭素収支の予測モデルの基礎となるデータセットとして欠かすことができない。リモートセンシングによる土地被覆分類は、それぞれの土地被覆で特徴的な分光反射特性を持つという原理に従って区分される。しかしながら、植物体の分光反射特性は季節によって大きく変化する。特に水田においては、土地被覆状況そのものがダイナミックに変化する。そこで、単時期の衛星データのみで解析するのではなく、季節の異なる複数時期の衛星データを組み合わせて解析することで、いかに分類精度を高められるか検討した。

単時期(2002年4・6・7・8・10月の5シーン)の衛星データ(Landsat ETM+)のみを使って土地被覆分類を行ったとき、総合分類精度(OA)は65.9±2.71、Kappa係数は0.501±0.046となり、観測時期によって大きなバラツキを示した。一方、衛星データの組み合わせの数を増やすごとに、分類精度は高まり、バラツキも小さくなった。5シーン全ての衛星データを組み合わせたとき、OAは73.6、Kappa係数は0.632となり、最も高い分類精度を示した。このことから、フェノロジー特性を考慮することで土地被覆の分類精度が高められることが分かった。また、日本のように湿潤な気候帯に属していると、雲のない衛星データを得ることは極めて難しい。本事例では、複数の衛星データを組み合わせた雲なし合成画像を作成することで、より広範囲の土地被覆分類図を作成することができた。複数時期の衛星データを組み合わせて行う土地被覆分類手法は、分類精度・空間スケールの2点で有用であると言える。

日本生態学会