| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-097

シロイヌナズナ属多年草における開花抑制遺伝子FLCの発現フェノロジー

相川慎一郎,工藤洋(神戸大・院理),清水健太郎(チューリヒ大・理)

植物は環境の変化をシグナルとして特定の季節に繁殖する。温度は季節的に変化する環境要因の一つであるが、その変化は長期的な傾向であり、短期的に見ると数時間、数日単位で大きく変動する。そのため、特定の季節に繁殖するためには、短期間の変化を無視して長期間の変動のみに反応しなければならない。それは、どのような分子機構で行われているのだろうか?シロイヌナズナでは開花制御に関わる遺伝子が多く同定されている。それらの中核を担う開花抑制遺伝子FLCは、恒常的に発現して開花を抑制しているが、低温を長期間受けると発現が低下し、開花が促進される。本研究ではこのFLC遺伝子を季節に応じて開花調節するメカニズムの候補として、年間を通じた環境変動を経験する多年草ハクサンハタザオを対象に、発現がどのように季節変動しているか、またどのような時間スケールの温度変化に反応しているかを調べた。

ハクサンハタザオでの探索を行った結果、シロイヌナズナFLCと全cDNA配列で95%程度の高い相同性を持つハクサンハタザオFLCAhgFLC)を得た。2006年9月より1週間毎にAhgFLCの発現量を兵庫県内の野外集団で6個体について測定した結果、冬季に発現の低下が見られ、春には発現の再上昇が見られた。室内実験により、この発現の低下・再上昇は温度に依存して起こっていることがわかった。さらに、様々な時間スケールの温度変化とAhgFLCの関係を調べるために、気温の移動平均を用いて発現量との関係を調べた。その結果、過去5週間の気温の移動平均と高い相関が見られた。これらのことから、FLC遺伝子は野外において、温度変動の長期的傾向に応じて発現調節されており、季節的な環境変動への応答を担っていることが示唆された。

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