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一般講演(ポスター発表) P1-100
本研究では、気象庁による国内の季節活動の開始日データ(1954〜2006)を用いて、ニホンアマガエルの初見日、繁殖日及びトノサマガエルの初見日の年変動、これら2種に影響する環境要因について解析を行った。フェノロジー開始日の年変動はピアソンの積率相関検定により、傾向の有無を調べた。環境要因については、開始日を目的変数とし、4月の最低気温、平均湿度、降水量、日照時間、および冬眠期間中の積雪量を説明変数として、ステップワイズ重回帰分析により、説明変数の選択を行った。
その結果、これらのカエルのフェノロジーは年々後れる傾向があることが明らかになった。(トノサマガエル初見日; 0.35, p<0.001 ,アマガエル初見日 0.27, p<0.001 アマガエル初鳴日; 0.26, p<0.001)。開始日に関係する環境条件は、2種の初見日、繁殖開始日共に同様の傾向であった。開始日は、温度、日照量が上昇すると早くなるが、湿度が減少すると遅くなることが明らかとなった。降水量の減少や積雪量の増加は僅かではあるが、開始日を遅らせる結果が得られた。しかし、自由度調整済み決定係数は低かった(トノサマガエル初見日R2=0.17, アマガエル初見日R2=0.21初鳴日R2=0.18)。
日本の気温は過去50年で上昇傾向にある一方、湿度は減少傾向にある。そのため。カエル類の季節活動が遅れていると考えられる。自由度決定係数の低さの原因としては、これら2種のカエルが水田にハビタットを依存していることから、季節活動には気候だけではなく、水田への水張りなどのような、水田での農作業の状況も関わっているためと思われる。