| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-102

同所的に生育するガマズミ属2種の開花と落下果実の季節性

吉本敦子(金沢大・院), *木村一也, 木下栄一郎(金沢大・環日本海域環境セ)

金沢大学角間里山地区に同所的に生育しているガマズミ属2種(ミヤマガマズミ、コバノガマズミ)の開花を2005年から2007年まで観察した。その結果、常にミヤマガマズミが先に開花すること、開花時期の一部は重複すること、が明らかになった。結実フェノロジーを観察した結果、開花終了3週間後までは果実は急激に落下しそれ以降果実の残存率は緩やかに減少する2段階の時期が見られることがわかった。この結果はミヤマガマズミ、コバノガマズミにおいて1年間同じであった。リンゴなど果樹の先行研究によれば、開花終了直後に見られる果実の急激な低下は内部要因(未受精等)に起因し、それ以降の落下は外部要因(昆虫による食害、物理的要因など)に起因する、と報告されている。そこで本研究ではガマズミ属2種の果実の落下要因を探る事を目的とし、落下した花(子房)・果実数と虫害率について調べた。各種10個体の樹冠下にリタートラップを設置し、2007年5月の開花開始から熟果落下まで1週間に1回の回収を行った。花・果実をサイズと形状に基づいて仕分けを行った。

その結果、調査時期を通して5つのステージが確認された。ステージ1,2では花・果実の落下期間は2種間で差はなく、短期間内に集中した。果実の食害は5月下旬から認められた。食害ピークの時期およびその食害要因の内訳は種によって異なった。ミヤマガマズミの果実虫害率(落下果実数に占める虫害果実数の割合)はコバノガマズミにくらべて有意に低いことがわかった。加えて、より早い時期に開花する個体ほど果実虫害率がより低くなることがわかった。これらはミヤマガマズミの個体は早期に開花することで虫害をより免れていることを示唆している。

日本生態学会