| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-105

発芽実験における最適な実験デザインと適切なサンプルサイズ

*本田裕紀郎(東大・院・緑地植物実験所), 加藤和弘(東大・院・緑地植物実験所)

種子の発芽は生態学を含む様々な分野で研究されてきた。発芽数は二項分布に従った計数データであるものの、分野を問わず、数十粒(20-50)の種子の発芽率などの指標を少数の反復(2-4)ごとに求め、それをもっぱら分散分析やt検定に供してきた。このデザインは発芽試験の方法を定めたISTAルール(条件ごとに100粒4反復を推奨)に従ったものではない。それは、様々な理由で実験に供試可能な種子数の制約が大きいことによる。効果サイズが考慮されない仮説検定と比較して、信頼区間の表示は検定を行った場合の処理水準間の差の有意性も判断可能であり、より多くの情報を伝えられる。本研究では、一般的な発芽試験を模したシミュレーションにより、少数の種子もしくは反復による発芽試験において推定された母平均の信頼区間は100(1-α)%の確からしさを保証しないことを示した。つまりこの場合、t検定を施した際の第一種の過誤率はαを超える。しかし発芽試験における信頼区間においても、反復当たりの種子数を減らし、反復を増やすほど100(1-α)%の確からしさは保証され、信頼区間そのものも狭まることを示した。それに対して、正規分布に従わないデータの解析で頻繁に用いられる一般化線形モデルを用いた場合、説明変数が少数の因子のみになりがちな実験室での発芽データでは実験デザインの異なりは結果に影響しない。しかしこの場合、AICを基準にしたモデル選択では、処理の効果がもともと非常に高い確率で認められ、モデルの予測値は普通に求めた平均値に一致することから、情報量に乏しい。反復当たりの種子数を1まで減らすことにより、二項分布に従う母平均の信頼区間を推定することも可能となり、また種皮から染み出た物質による発芽阻害(発芽の独立性に影響)が必然的に回避される。

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