甲殻類では優劣関係を形成する種が知られている。一方、多くの甲殻類では、繁殖期のオスは、メスをめぐって他のオスと競争関係にある。オスは他のオスからメスを確保し、交尾を成功させるため、自身の状態や周囲の状況に応じた行動をとるべきだと考えられる。そこで優劣関係は、オスの繁殖行動に重要な影響を与えるかもしれない。

本研究では、テナガホンヤドカリを対象種として、オス同士のメスをめぐる闘争行動における優劣関係の影響を調べることを目的として、（１）直前の対戦相手、（２）競争者が同居していた時間を操作して、その後のメスをめぐる闘争行動を観察した。

本研究では全ての実験で、サイズ差のあるオス２個体を一緒にし、１つの水槽に入れた。その後、成熟メスを入れてオスの行動を観察し、どのオスが先にメスをガードしたか、オス間の闘争はあったか、などを記録した。この時、オス２個体が出会ったことがある個体同士か、知らない個体同士かで、オスの行動が異なるか調べた。本発表ではこれらの実験の結果について報告する。