| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-120
アミ類(アミ目 Mysida)はエビ形をした小型甲殻類で、海洋沿岸域における動物プランクトンの主要分類群である。多くの種は近底層に存在し、数百〜数万個体からなる大規模な群れを形成する。群れの進化には被捕食の低減や好適環境の維持などの環境適応的プロセスと、繁殖機会の増大などの社会生物的プロセスが重要であると考えられる。しかし後者についてはよくわかっていない。群れ内における社会的関係を解明するにはまず群れの形成過程について理解する必要があるが、膨大な個体数からなる群れの形成過程を調べるのは困難であった。
近年伊豆半島周辺では初めて採集されたヒメオオメアミ(Idiomysis japonica)は、1年間を通じて10 個体前後の小規模な群れを形成することが判明し、前述した群れの社会生物的研究材料として最適であると考えられる。しかし本種に関する知見は分類学的記載以来報告されておらず生態に関して全く不明であった。このためまずヒメオオメアミの生活史と群れ基本構造に関する基礎的知見を得ることを目的として研究を行った。
伊豆半島沿岸の2カ所を調査地として、2007年5月から11月の間定期的な採集調査を実施し、群れ毎に採集して構成個体の雌雄と体長を記録した。これらのデータからヒメオオメアミの群れの基本構成について、特に雌雄間で群れ形成様式に違いがあるかどうかについて検討した。その結果雄は雌より強い集合傾向を示した。また雄は体サイズ同調的な集合傾向を示したのに対して雌はそのような傾向は弱かった。これらの結果からヒメオオメアミの群れ形成過程について考察した。