| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-123

幼サンゴの生存における微地形(ギャップ)の効果

野澤洋耕(黒潮生物研究所)

イシサンゴの生存率は群体サイズの増加とともに上昇することが知られており、大きさ1mm以下の定着直後の幼サンゴでは、生存率が非常に低いことが報告されている(定着後7-10ヶ月目、<2.8%)。しかしながら、先行研究では平らな板上に定着させた幼サンゴを用いて生存率を調べており、実際の定着基盤上に見られる割れ目や窪みなど“ギャップ”の効果を考慮に入れていない。そこで本研究では幼サンゴの生存におけるギャップの効果を確かめる為、2006年9月から1年間、高知県南西部にある黒潮生物研究所地先の海中で実験を行った。

実験には幼生を入手することができたイシサンゴ3種を用いた(Echinophyllia aspera, Favites pentagona, Platygyra contorta)。各種幼生を72個の窪み(直径5mm、深さ3mm)を付けた平らな定着板(10cm×9cm×5mm)上に定着させ、定着した幼サンゴの位置を記録した。セディメントの影響を考慮し、定着板は水平と垂直に10枚ずつ(P. contortaのみ水平8枚)海中の岩盤上に直接固定した。定着板は毎月回収され、生存している幼サンゴとその大きさを記録、再び海中に固定した。

実験開始時に定着板の平面部と窪みに定着した幼サンゴ数はそれぞれE. asperaで98と3690、F. pentagonaで186と521、P. contortaで172と1020であった。平面部に定着した幼サンゴの死亡率は大変高く、実験開始4ヵ月後までに全ての種で全滅した。これに対し、窪みに定着した幼サンゴの生存率は同4ヶ月目では12.8−38.6%であり、約1年後では1.8−14%であった。以上の結果は幼サンゴの生存に対する微地形(ギャップ)の強い影響を示しており、基盤の表面構造の違いがサンゴ群集の発達に大きな影響を与えている可能性が示唆された。

日本生態学会