| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-124

沖縄島北部で同所的に生息するヤモリ属2種間での1次性比の比較

*山本友里恵(琉球大・院理工・海環),太田英利(琉球大・熱生研)

沖縄島北部に生息するヤモリ属の一種ミナミヤモリGekko hokouensisとその未記載隠蔽種であるオキナワヤモリGekko sp.について,飼育下で得られた卵の孵化幼体における1次性比を調査した.まず,両種の産卵期である2007年4−8月に輸卵管卵を持つ妊娠雌を沖縄島北部の野外にて採集した.妊娠雌には水とコオロギ,さらに補助栄養としてカルシウム剤を与えて研究室内で個別に飼育することで卵を得た.得られた卵は琉球大学構内(沖縄島中部)の直射日光の当たらない屋外に,孵化まで静置した.孵化した幼体は妊娠雌と同様の環境で飼育し,最小成熟サイズ以上に成長した時点で,成体雄にのみ存在する前肛孔と雄性生殖器の有無により性判別を行った.その結果,4−6月に産卵された卵では,ミナミヤモリの性比は雄:雌=2:1(雄16個体,雌8個体)であった.対照的にオキナワヤモリでは雄:雌=2:3(雄12個体,雌18個体)であった.7−8月に産卵された卵から生まれた個体は2007年12月現在,未成熟のため飼育中である.ミナミヤモリはZW型の性染色体を持つことから,雌雄の比率ほぼ等しくなると予想されたが,本研究の結果は大きく雄に偏った.一方,オキナワヤモリはミナミヤモリのような形態的に分化した性染色体を持たないことから環境要因による性決定,特に爬虫類で多くの例が報告されている温度依存性決定を行っている可能性が考えられる.また本研究の結果と同様,温度依存性決定を行う生物ではやや雌に偏った性比となる例が報告されている.今後は野外における2次性比を調査し,性決定様式と性比の関係,そしてこれらの戦略の違いについて比較・検討を行う.

日本生態学会