| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-126
ナミアゲハの若い雄は湿地などで吸水し、水に溶けたナトリウム塩を摂取していると言われてきた。室内飼育して羽化させた雄に0.01M塩化ナトリウム溶液を与えてから交尾させると、通常より大きな精包を注入することができる。そこで、本研究では、交尾後に0.01M塩化ナトリウム溶液を与えて再び交尾させ、注入した精包の重量や有核精子束の数から塩化ナトリウムの効果を検討した。室内飼育したナミアゲハの雄を羽化の翌日にハンドペアリングにより未交尾の雌と交尾させると、約6mgの精包と、約40本の有核精子束を雌に注入する。これらの雄を0〜5日間休息させ、その間、毎日5分間0.01M塩化ナトリウム溶液や蒸留水、20%ショ糖溶液を強制的に与え、再び未交尾の雌と交尾させた。交尾した日の内に再び交尾させた雄は、約1mg精包と約10本の有核精子束しか注入できなかった。蒸留水を与えて休息させた雄は、3日間の休息で初回交尾時と同等の数の有核精子束を注入したが、5日間休息させてから再交尾させても、初回交尾時の80%の重量の精包しか注入できなかった。一方、20%ショ糖溶液を与えて休息させた雄は、2日間の休息で初回交尾時と同等の数の有核精子束を注入し、3日間の休息で初回交尾時と同等の重量の精包を注入できた。これに対して、0.01M塩化ナトリウム溶液を与えて休息させた雄は、初回交尾の翌日に再交尾させると約4mgの精包で、約45本の有核精子束を注入した。すなわち、交尾後に摂取したナトリウム塩は、精包の重量を回復させる効果はないが、1日で、有核精子束の数を急速に回復させる効果があると考えられた。しかし、5日間休息させても、初回交尾時の90%の重量の精包しか注入できなかった。これらの結果から、交尾後の吸水行動の意義を考察した。