| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-129
近縁種が同所的に分布する場合、種間競争や異種間交配を避けるためのメカニズムがあると考えられる。後者のひとつとして繁殖に関係する形質置換が起こることがあり、これは種分化を完了させるreinforcementの結果と考えられている。この例のひとつに、同種(配偶者)認識に関係した体色の変化があげられる。カワトンボ科(Calopterygidae)は、その特徴的な翅色を同種認識に使うことが知られており、reinforcementを通した種分化研究の古典的な材料として用いられてきた。日本には4属が分布しており、本研究では同所的に分布する集団のいるカワトンボ属(Mnais)に注目した。カワトンボ属は森林の渓流に生息し、オスがなわばりを作り、産卵にやってきたメスと交尾して産卵させるという繁殖パターンを持つ。
本年度は、同所的に生息するカワトンボ属2種のマイクロハビタット選択について、オスのなわばり場所選択とメスの産卵場所選択の両面から評価し、両者が共存するメカニズムについて検討した。人工産卵基質を渓流の様々な場所に設置し、そこをなわばりとしたオス個体の記録と各基質設置場所の環境測定を行った。その結果から、種によってなわばりが形成される場所の光環境に違いがあることがわかった。またメスの産卵場所選択については、同種オスの存在が重要であると考えられた。これらの結果をもとに、同所的な近縁種がいる場合のカワトンボ属のマイクロハビタット選択と、捕食者回避やメスへの信号伝達の有効性との関係について議論したい。