| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-132

ミゾゴイの繁殖行動と習性 〜ミゾゴイは夜行性の鳥か?〜

川名 国男(一般)

近年、ミゾゴイは、激減していると言われているが、その生態についてはほとんど知られていない。また、夜行性の鳥と言われてきたが、この点についても何ら考察が行われてこなかった。こうした点に注目して、東京・あきる野市内において、2006年、2007年の2年間にわたり、繁殖行動を中心に詳細な調査を実施した。

この結果、繁殖生態の一面が明らかになった。新しい知見として、給餌の方法は雛が親鳥の頭をくわえ込む形で口移しにより行われること、雛が16日齢頃までは「反芻給餌」が行われること、雛には翼を左右交互に半開きにした「餌ねだり行動」があること、採餌は視覚に頼る方法であること、幼羽は竹林内で保護色であることなど、興味深い行動が分かった。また、抱卵日数は27~28日が妥当であり、巣立ちまでの日数は37〜38日が妥当ではないかと思慮する。

特に重要な知見として、ミゾゴイは夜行性の鳥といわれてきたが、給餌活動はもっぱら昼間であり、夜間の給餌活動は全く認められなかったことである。夜間は、親鳥も雛と共に巣内で休眠をしていることが明らかになった。これらの結果から、少なくとも繁殖期間中の約4ヶ月間は、夜行性の鳥ではなく、昼行性の鳥である可能性が高いと言えるのではないかと思慮する。

また、採餌場所は、民家付近の竹林、刈り込まれた草地、神社の境内、民家の裏庭、歩道面などであり、人間の生活環境に依存していることも明らかになった。なかでも竹林は、餌資源が豊富で重要な採餌場であり、幼鳥にとっては安全な休息の場であった。

ミゾゴイは、人間活動による生息環境の変化に伴い、新しい環境に適応しながら、習性も変化してきているものと思慮する。こうした新しい知見を報告するとともに、ミゾゴイの保護と生息環境の保全の重要性を提言する。なお、ミゾゴイの繁殖生態については、今後も調査を継続して、より詳しい生態を明らかにしていきたい。

日本生態学会