| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-133

エゾシカオスの交尾期に特異的に見られるマイグレーション

*揚妻直樹(北大・フィールド科学センター・苫小牧研究林),揚妻-柳原芳美(苫小牧市博・友の会)

北海道苫小牧市の高丘丘陵に位置する北海道大学苫小牧研究林内で3頭の成熟したオスのエゾシカを捕獲し、発信機をつけ、ラジオテレメトリー法によって行動域を調査した。行動域調査はシカ1については2002年3月から2004年9月まで、シカ2については2005年3月から2007年12月まで、シカ3については2006年1月から9月まで行った。すべてのオスシカは冬季から夏季まで、ほぼ苫小牧研究林内の東西南北約5km以内に留まっていた。しかし、秋になると東方向へ大きく移動することが示唆された。シカ1とシカ3については、少なくともそれまでの滞在地から6-8km東のウトナイ湖近辺までは移動していたと推量された。また、シカ2については、2005年秋にはウトナイ湖北に滞在していた。しかし、2006年秋にはさらに16km東の厚真町軽舞までは移動したことが解った。さらに2007年秋から初冬には厚真町軽舞に滞在していることが解った。苫小牧研究林を離れた時期は9月13日から10月18日(N=6)であった。一方、秋の移動後まもなく交通事故死したシカ3を除き、シカ1とシカ2は少なくとも11月11日から1月27日(N=4)までには苫小牧研究林に戻っていた。つまり、調査したオスたちは基本的には定住しているものの、毎年秋から冬までの一時期、東方に数kmから20数km、離れた地域で過ごしていることが示唆された。このような秋季に特異的にみられた移動パターンの意味については、交尾相手や餌資源の探索などが考えられるが、よく解らない。

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