| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-136
カッコウ類による托卵では,托卵を受けた宿主は大きなコストを被る.そのため,宿主には対托卵行動が見られる.多くの種で托卵鳥の卵を巣外に捨てたり巣自体を放棄したりする卵排除行動が知られている.托卵鳥を攻撃して巣の近くから追い払う行動も托卵回避に役立つ可能性がある.また,托卵鳥のとまり場の近くなど托卵されやすい場所を避けて営巣することによっても托卵を回避できる可能性がある.
ウグイスはホトトギスによる托卵を受ける.ウグイスは実験的に巣に擬卵を入れると自種の卵と明らかに色が異なる場合卵排除行動を示すが,ホトトギス卵はウグイス卵とよく似た色をしているためか自然状態で卵排除行動は知られていない.そこで,ウグイスはホトトギスに対して巣を防衛したり,托卵されにくい巣場所を選択して営巣したりしているかを調べた.また,留鳥のウグイスは夏鳥であるホトトギスの渡来前から繁殖を行うが,ホトトギスの渡来によって対托卵行動が変化するかどうかを調べた.
調査・実験は2006年と2007年,東京都三宅島で行った.巣場所の特性をホトトギスの渡来前後で比べると,渡来後に作られた巣の方が見えにくい場所にあった.しかし,托卵と巣場所の特性の間には関係が見られず,ウグイスが巣場所を選択することによって托卵を回避しているかどうかは明らかにできなかった.
巣の防衛行動を調べるため,ホトトギスとキジバトの剥製を巣の前に置いてウグイスの反応の強度を測定した.反応はキジバトよりもホトトギスに対して明らかに強く,ホトトギス渡来前後で比較すると渡来後で反応が強くなっていた.渡来後についてみると,托卵を受けた個体は受けなかった個体よりも防衛行動が弱かった.これらのことは,ウグイスが巣の防衛という対托卵行動をもち,それは托卵回避に機能していること,そしてホトトギス渡来後は防衛を強化していることを示している.