| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-141

協同繁殖魚の巣のサイズ、親のサイズ、グループサイズと繁殖成功

*安房田智司(北大FSC), 幸田正典(大阪市立大学理学研究科)

協同繁殖を行う多くの鳥類やほ乳類では、ヘルパーの多い繁殖グループ(=グループサイズ大)は質の高いなわばりを占有し、繁殖ペアは高い繁殖成功を得ることが知られている。協同繁殖を行う魚類(Neolamprologus pulcher)においても同様の結果が得られているが、魚類のグループサイズと繁殖成功の関係を調べた研究は少ない。最近の研究から、グループサイズは繁殖ペアやヘルパーの体サイズと密接に関係しており、協同繁殖する魚類の大部分がグループ内でサイズヒエラルキーを持つことも分かってきている。

本研究の対象種であるJulidochromis ornatusN. pulcherと同様に協同繁殖システムを持つが、ヘルパー数が少ないこと、ヘルパーは頻繁に繁殖参加することなど、社会構造がN. pulcherとは異なる。繁殖は岩の隙間で行われるが、この繁殖巣は繁殖ペア、ヘルパー、仔魚のシェルターとして重要な役割を果たす。ヘルパーの数は繁殖グループメンバーの利益とコストのバランスで決まると考えられる。そこで、J. ornatusの野外におけるグループサイズ、繁殖ペアとヘルパーの体サイズ、巣のサイズおよびグループの繁殖成功との関係を調べ、グループサイズを決める要因を探ることを目的とした。

解析の結果、ヘルパーの多い繁殖グループは、1)繁殖ペアやヘルパーの体サイズが大きいこと、2)保護されている仔魚数が多い傾向にあること、3)より広い岩の隙間を利用していること、が示された。また、繁殖ペアメスの体サイズが大きいグループでは、ペアオスもヘルパーも大きかったことから、本種においてもサイズヒエラルキーが協同繁殖グループの維持に重要であると考えられる。これらの結果をさらに詳しく検討し、協同繁殖を行う動物の研究と合わせて考察する。

日本生態学会