| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-142
生物社会での利他行動の進化は、多くの研究者の興味をひいている。潮間帯干潟に生息するヒメヤマトオサガニは、同種大型個体の体に付着する泥や砂を摂餌することによって相手の体を掃除し(allocleaning)、掃除を受けた大型個体は掃除後に相手に自身の餌場を譲る確率が高いことがわかっている。掃除を受けた個体(recipient)が相手に餌場を譲ることは常にコストになると考えられるため、このような行動がどうやって進化するのかを説明することは難しい。本研究では、allocleaningについて空間を考慮したゲームモデルを構築し、allocleaningにおける互いの協力(相手の体を掃除することと相手に餌場を譲ること)の進化を説明した。掃除個体(cleaner)と受け手個体(recipient)にそれぞれ、協力、裏切り、しっぺ返しの3つの戦略を考え、cleanerは餌場を譲られる利益が掃除するコストを上回り、recipientは継続的に次回も掃除される利益が餌場を譲るコストを上回る時に、互いのしっぺ返し戦略がナッシュ平衡となり、互いの協力が維持されることがわかった。また、協力の進化を説明するために2つの立場cleaner、recipientを固定した二重の格子を考えた。また、cleanerの相手への協力は場所によって利益もしくはコストになると仮定した。初期状態では全て裏切り個体(掃除しない、餌場を譲らない)とし、cleanerの協力、recipientのしっぺ返し、cleanerのしっぺ返し戦略を順番に導入し、最終的に協力が進化できるかをシミュレーションにより調べた。recipientのしっぺ返し個体の周りでcleanerの協力個体が増えていくメカニズムにより、結果的にrecipientのしっぺ返し個体が有利になり、互いの協力の進化が説明できた。