| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-150
ニホンホホビロコメツキモドキ(コウチュウ目:コメツキモドキ科、以下ホホビロと略記)は、オスは左右対称な外部形態であるのに対し、メス成虫の頭部左側及び左顎が著しく発達し、左右非対称な外部形態であることが知られている。
ホホビロのメス特異的な頭部非対称性の適応的意義を明らかにするために、メス特有の行動である産卵行動に着目した。ホホビロは枯れたメダケ(イネ科)に大顎を用いて孔を穿ち、竹内部に産卵する。孵化した幼虫は、産卵された節間内で成長発育し、一つの節間内で成虫となる。
野外調査(宮崎県高鍋町)では、表面積の大きな節間(太くて長い節間)に産卵痕が集中しており、産卵に好適な節間の存在が示唆された。
室内実験(東京都文京区)で、異なる太さの竹を与えた場合、太い竹に産卵する傾向が見られた。
ホホビロの産卵行動を特に左右大顎の使われ方に注目して観察したところ、産卵行動の経過とともに、左顎で竹を削る割合が高くなり、右顎に比して重要性が増大することが明らかとなった。
モデルによって非対称性の程度と産卵の際に削るのに必要な材の厚さとの関係を調べた結果、材が薄い場合は左右対称な頭部・大顎形態が最適であるが、材が厚い場合は非対称な形態が最適となった。
これらの結果から、ホホビロのメス特異的な頭部形態の非対称性は、厚い竹(太い節間ほど材部が厚い)に産卵するための適応的な形態であることが考察された。