| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-155
本研究では、溜池の溶存酸素濃度が溜池の魚類群集の組成を決定する一つの要因と考え、溜池に生息する魚種の低酸素に対する反応を室内実験により調べた。実験結果と溜池の魚類相との関連性を考察した。
室内実験ではギンブナ、タモロコ、モツゴ、アブラハヤ、ウグイ、オイカワ、メダカ、イバラトミヨ、トウヨシノボリ、ジュズカケハゼ、ブルーギル、オオクチバスの低酸素に対する反応を調べた。魚類には、低酸素になると水面呼吸(aquatic surface respiration: ASR)を行って酸素が溶け込んでいる水面の薄い層を効率よく利用し、低酸素を回避しようとするものがある。実験に使用した魚種では、ASRを行い低酸素回避が可能な魚種と、ASRを上手く行えず低酸素への耐性が低い魚種とがあることが分かった。酸欠耐性が高かった魚種はギンブナ・タモロコ・モツゴ・オイカワ・メダカ・イバラトミヨ・ブルーギルの7種で、アブラハヤ・ウグイ・トウヨシノボリ・ジュズカケハゼ・オオクチバスは耐性が低いという結果になった。
溜池には、夏季になると水面をヒシなどの浮葉植物が覆い低酸素になる池がある。実験で使用した魚種を採集した小規模な溜池を、夏季の溶存酸素濃度により、非酸欠溜池・軽酸欠溜池・酸欠溜池の3タイプに分けて、実験の結果との対応を考察した。それぞれの溜池に生息している魚種数は、概して非酸欠溜池が多く、酸欠溜池が少ない結果となった。非酸欠溜池には低酸素に強い魚種、弱い魚種ともが生息していた。軽酸欠溜池は非酸欠溜池と生息している魚種が大きくは異ならないが、低酸素に弱いジュズカケハゼの生息する溜池は少ない。酸欠溜池では非酸欠溜池に生息するような低酸素に弱い魚種は減少し、生息する魚種は低酸素に強い魚種が主となる。