| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-160

スクミリンゴガイの逃避行動における学習

*相崎香帆里, 遊佐陽一(奈良女子大・理)

スクミリンゴガイPomacea canaliculataは、同種他個体が捕食などにより傷ついた際に出される体液(貝汁)に対して逃避行動を示す。本種の成貝は捕食者の匂いに対しても逃避するが、孵化貝は捕食者の匂いには逃避行動を起こさない。このことから本種の捕食者認知に学習が関わっている可能性がある。淡水巻貝において逃避行動に関する学習を検討した研究例は少ないため、本種において2つの室内実験を行い検討した。

第1の実験では、処理区の孵化貝をコイCyprinus carpioと貝汁に同時にさらし、コントロール区の孵化貝をコイのみにさらした。1日後と3日後に両者をコイのみにさらした。この結果、1日後のコイ処理に対する逃避率は処理区の貝がコントロール区の貝よりも有意に高かった。3日後には有意差はみられなかったが、広義の学習が成立していることが示唆された。

この結果だけでは連合学習ではなく鋭敏化の関与を否定できないことから、2種の魚を使った第2の実験を行った。4つの処理(A〜D)を設け、1日目にAとBの孵化貝をコイと貝汁に、CとDの孵化貝をシクリッドAnomalochromis thomasi と貝汁にそれぞれさらした。もう一方の魚種が捕食者でないことを学習させるために、2日目にAとBにシクリッドのみ、CとDにコイのみを処理した。その後2魚種に対する反応をみるために、3日目にAとCにコイ、BとDにシクリッドを処理し、4日目には処理を3日目とは逆にした。この結果、3日目にAの逃避率がBに比べ有意に高くなったが、C・D間では有意差はみられなかった。4日目には処理間の有意差はみられなかった。この結果より、第2の実験でも鋭敏化の可能性を明確に否定できなかった。しかし処理による行動の変化が2‐3日間持続し、この期間は鋭敏化としては長すぎることから、連合学習成立の可能性が示唆された。

日本生態学会