| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-167

イソギンチャクの形:水流と餌サイズに応じた可塑的変化

*篠原沙和子(北大・水産), 和田哲(北大院・水産)

ある生物の形がその生息環境に依存して変化する現象は、表現型可塑性の代表的事例として数多く知られている。そのほとんどは環境が一度変化したときの形の変化に焦点をあてているが、可塑性の発現に何らかのコストがかかるならば、環境が繰り返し変化することで、形の可塑性に変化が現れるかもしれない。

イソギンチャクは移動によって環境を変化させる能力は低いが柔軟な体構造をもち、短時間で体型を著しく変化させることができる。イソギンチャクの体は以下の3つに区分できる;体幹部位、口盤・触手部位、足盤部位。各部位はそれぞれ、体を支え、エネルギーの貯蔵や器官維持する機能、摂餌や排泄機能、移動や固着機能を持つと考えられるので、これらの部位の可塑的変化には、環境条件や、その個体の状態が関与することが予想される。

実験にはヒオドシイソギンチャクを用いて、飼育環境下で水流 (有無) と餌サイズ (大小) を操作した。水流条件では、水流を1週間にわたって12時間ごとにおこした。また、餌として、むき身のエビを水流停止後に与えた。形態測定は、水流開始直前、水流開始30分後 (水流停止時)、水流停止30分後に、それぞれ体幹の高さ (体高)、口盤面積、足盤面積について測定した。

その結果、水流開始後に、体高は低くなったが、水流停止後、体高は再び高くなった。さらに環境変化が継続した場合、水流によって体高が縮む程度と、水流停止後に体高が再び高くなる程度は、どちらも餌サイズが小さいグループにおいて大きくなる傾向があった。その他の結果と、その考察については、発表の際に取り上げたい。

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