| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-168

マメゾウムシ二種における雄による雌の交尾抑制の変異と種間交尾がメスの交尾行動に与える影響

山根隆史,宮竹貴久(岡大院・環境・進化生態),木村吉伸(岡大院・自然科学),且原真木(岡大・資生研)

昆虫のメスには、種や集団によって生涯に一度しか交尾をしないものもいれば複数回交尾をするものもいる。メスが複数回交尾し、精子間競争が生じる場合、オスにとって自分が交尾したメスが将来に他オスと交尾する機会を減らせるなら繁殖のうえで適応的である。したがって、交尾によって生じるメスの再交尾意欲の減退は基本的には初回に交尾したオスがメスの多回交尾を抑制するために進化させたオスの適応的戦略であるとされる。実際に、複数の昆虫種において、オスがメスの交尾を抑制する物質を内部生殖器(特に付属腺)に有する種が存在する。

Callosobruchus属の甲虫は、近年、メスの多回交尾の頻度とそれに関連する繁殖形質の進化に関して主に性的対立の視点からのモデル昆虫として注目されている。我々はアズキゾウムシCallosobruchus chinensisとヨツモンマメゾウムシC. maculatusのオスの内部生殖器全体の水抽出物に同種メスの交尾行動を抑制する効果があることを見出した。またアズキゾウムシのメスの交尾を抑制するオスが有する成分は精巣と付属腺に存在し、ヨツモンマメゾウムシのそれは貯精嚢(もしくは射精管)と付属腺に存在することも明らかにした。さらに両種間で交尾をさせた場合に、交尾抑制成分の生理上の機能において種間に一方向の作用があることがわかった。つまり、マメゾウムシオスとアズキゾウムシメスを交尾させた場合には再交尾抑制が見られたのに対し、アズキゾウムシオスとヨツモンマメゾウムシメスを交尾させた場合には再交尾抑制が見られなかった。この理由として、種間での交尾器の性間不和合性などにより射精物質の移送が起こらなかったことが考えられる。

日本生態学会