| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-169
動物の空間分布がどのようにして決まるのか、そのプロセスを明らかにすることは空間生態学における重要なテーマの1つである。この解析を通じて、個体の行動と個体群レベルの現象を結びつける試みも盛んになりつつある。チュウサギは、山林でコロニー性繁殖を行い、付近の水田やハス田などの農地で魚類、両生類、昆虫などを採食する。採食するチュウサギの空間分布には、繁殖コロニーの位置、農業活動のあり方や食物資源の分布、同種・他種個体の存在など、複数の要因が影響している可能性がある。さらにこれらの要因は、異なる空間スケールでは異なる影響を与えている可能性がある。例えば、広域スケールの空間パターンにはコロニーの位置と農地環境の性質が強く作用し、中〜局所スケールには同種個体による誘引作用が強く働いているかもしれない。そこで本研究は、採食するチュウサギの空間分布パターンを、複数の空間スケールにわたって解析することで、以下の疑問に答えることを目的とする。
1. チュウサギの空間分布パターンは階層的なパッチ構造をもつか?
2. チュウサギの空間分布パターンは農地環境の性質(土地利用形態、圃場整備、注水度)で説明できるか?
3. 農地環境の性質だけでは説明できないとき、どのような要因が関わっているのか?
調査は2007年4月末〜8月にかけて、茨城県の霞ヶ浦南側に隣接する農地(幅約400m、長さ約10km)で行なった。週1〜2回、調査地内のすべてのサギ類の分布を地図上に記録した。そして同日中に、サギ類の空間分布に影響を与えうる環境要因として、土地利用形態(水田、ハス田など)、圃場整備の有無、農作業の進行状況および注水度(水に覆われている田面の面積割合)を記録した。発表では、チュウサギと農地環境の各性質の空間パターン解析から得られた結果について報告する。