| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-170
多くの動物にとって、餌の質や獲得しやすさは大きく変動し、その予測は困難である。したがって、利用可能な餌を効率的に発見する能力は、しばしば個体の適応度を大きく左右する。このため動物の中には、自分よりも先に採餌している個体に追従することで、新規の餌をより効率的に発見するものがいる。しかし、彼らが餌場で出会う個体は、餌のありかや質を示す情報として同質のものばかりとはかぎらない。たとえば特定のタイプの餌を好む動物は、自分と餌の好みが異なる個体より、好みが似ている個体に追従したほうが、欲しい餌を発見できる効率は高くなると予想される。では実際の動物は、自分と餌の好みが似ているか否かに応じて、他個体への反応を変えるのだろうか?
マルハナバチは種ごとに口吻の長さが異なり、それぞれにつり合う長さの花筒を持つ花種を好む。したがって餌を探している個体は、花の好みが異なる他種よりも、好みが似ている同種の個体にたいして、より追従する傾向をもつかもしれない。この可能性を検討するため、我々はツリフネソウを訪花中のトラマルハナバチを対象とした野外実験を行った。実験では、見知らぬ花(リンドウ)の2つの花序の一方に、同種(トラマルハナバチ)あるいは口吻長が短い他種(クロマルハナバチ)の個体を添え、採餌中の個体にいずれか1つの花序をえらばせた。するとハチは、リンドウに同種の個体がとまっているときには2つの花序をほぼ等しい頻度で訪れたが、リンドウに他種がとまっているときや、専攻訪花中のツリフネソウの花序に同種がいるときには、他個体のいない花序を好んで訪れる傾向を示した。この結果は、マルハナバチが未知の花を訪れる際、他種より同種の個体に追従することにより、自分の口吻長につり合う長さの花を発見する効率を高めていることを示唆する。