| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-174
動物の性的二型の多くは、オス間の配偶者獲得数や受精数の差に起因する‘性淘汰’により進化したと考えられている。メダカOryzias latipesでも、尻鰭や背鰭の長さ、体高、そして光沢鱗数に性的二型が存在する。興味深いことに、これら二次性徴形質の性的二型の程度は低緯度の集団ほど大きいことが知られており、その緯度クラインには遺伝的な基礎もある。これは、低緯度ほど性淘汰が強いことを反映しているだろうか?緯度の異なる2野生集団(青森 vs. 福井)の繁殖行動を、自由交配実験により観察・比較した。その結果、オス同士の闘争や配偶の妨害頻度は、青森のオスよりも福井のオスの方が多いことがわかり、低緯度の集団の方が同性内淘汰が強く働いていることが示唆された。また、青森のメスより福井のメスの方が、オスの求愛を拒否する割合が高いことから、低緯度の集団の方が異性間淘汰も強く働いていることが示唆された。オスの形態的特徴や行動が繁殖成功にどう関係しているかを調べるため、集団間で雌雄を入れ換えて交配実験を行ったところ、青森のメスも福井のメスも、パートナーが青森のオスである時より、福井のオスである時の方がより多く配偶する傾向にあった。これは,どちらの集団のメスも二次性徴形質の顕著なオスを配偶者として選択する傾向にあることを示す。また、多変量解析の結果、どちらの集団内でも体長が大きいオスほど求愛行動や闘争・妨害といった競争行動の頻度が高く、メスとより多く配偶する傾向にあることがわかった。オスの体高や背鰭長も繁殖成功と正の相関を示したが、それらの形質は体長とも強く相関していた。これらの事実は、体サイズの大きなオスほど繁殖成功が高いことを示唆する。