| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-177

オオルリの渡りのコースと年齢比の違い

井戸浩之(愛媛県立衛生環境研究所)

井戸浩之(愛媛県立衛生環境研究所)、小畑義之(日本鳥類標識協会)らは、兵庫県神戸市六甲山(1995年〜2006年)、愛媛県伊方町佐田岬(2005年〜2006年)、愛媛県宇和島市鬼ヶ城山(2006年〜2007年)の3地点において8月から11月まで、鳥類の秋の移動を調べるため、カスミ網を用いて鳥類を捕獲し、足環を装着して放鳥する標識調査を実施した(学術捕獲許可 環国地野許第070413005号他)。

その結果、ヒタキ科オオルリの秋の渡りについて、六甲山、鬼ヶ城山では幼鳥が多く(成鳥は1割)、佐田岬では成鳥が多い(成鳥は3割〜5割)ことが明らかとなった。また、渡りの時期について、六甲山や鬼ヶ城山では8月初旬から9月下旬であったのに対し、佐田岬では9月下旬のみであった。このような年齢比の違いと渡りの時期の違いは、他の種でも見られることが示唆された。

調査を行った3地点は六甲山を除き地理的に離れていないため、生じた時期の違いが移動の時間差により生じるとは考えにくい。従って、環境の違いが渡りの時期、年齢比に影響を与えたと考えられる。3地点の環境の違いを検討したところ、第一に六甲山、鬼ヶ城山は標高約1000m、佐田岬は標高約50mと調査地点の標高が異なること、第二に佐田岬が距離約40kmの半島であり、六甲山、鬼ヶ城山と比較して繁殖地からの距離が離れていることの二つが挙げられた。

以上のことから、オオルリは、繁殖終了後、幼鳥は8月に標高1000m程度の樹林帯に滞在し9月中旬以降に渡りを開始すること、成鳥は9月中旬以降に渡りを開始し、高原の樹林帯に立ち寄る個体は少ないことが示唆された。

今後は、調査地点、日数を増やし、オオルリ他の秋の渡りの傾向について詳細に調査していく予定である。また、回収記録や、捕獲される際の方向、ふしょや全頭長の計測値のばらつきなどを解析することにより、渡りの詳細を調べていきたい。

日本生態学会