| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-181

オオニワシドリのディスプレイとあずまや形成:あずまやオーナーと非オーナーとの比較

遠藤千尋(京大院・理・動物生態), 江口和洋(九大・理), 高橋雅雄(立教大・理), 上田恵介(立教大・理)

ニワシドリ(庭師鳥)のオスがつくる「あずまや」は、繁殖ディスプレイのための構造物として顕著な例である。あずまやには、交尾期以前から、メスやオーナー以外のオスが訪れ、オーナーのオスが冠羽をみせるディスプレイをする。あずまやは、オーナーのオスが常に手を加えている一方で、近隣のオスによる破壊、装飾品の盗みという操作が加わる。これらは、オス間の力関係を反映している可能性が高い。本研究は、オーストラリア北部の熱帯林にて、オオニワシドリChlamydera nuchalisのあずまやがどのように形成されるのかを知るために、あずまやのオーナーとオーナー以外のオスの行動を観察した。調査地には、オーナーのいるあずまやが点在し、それ以外に、オーナーではないオスが集まってディスプレイを行う「display site」があることがわかった。そこでは、いくつかの近い場所でディスプレイが単独、あるいは2羽以上のオスによって行われていた。オスの冠羽は、未熟なものから成熟したものまでみられた。ディスプレイをする場所では、枝を集めていくつかのかたつむりや緑の葉をおいたり、木の根もとにかたつむりのみをおいたり、周囲の葉をちぎって踊り場をつくるなど、あずまやを構成するさまざまな要素が部分的に出現し、かたつむりなどの盗みあいがみられた。このようなdisplay siteや非オーナーのオスの行動に関しては、他のニワシドリにおいても報告されていない。display siteは、将来のあずまやオーナーを選抜するアリーナ、あるいは、将来の新しいあずまやサイトである可能性などが考えられるが、ここでのオス間のインタラクションは、彼らにはあずまやのオーナーになるための長く厳しい競争と、なんらかの社会構造があることを示唆するものである。

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