| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-183

ウラナミジャノメでは体サイズの小さい世代が大きな卵を産みます

*鈴木紀之,西田隆義(京大院・農・昆虫生態)

一年に複数の世代を繰り返す多くの節足動物で、卵サイズの季節変異がみられる。Smith&Fretwell(1974)は、最適な卵サイズが親による繁殖への総投資量とは無関係に決まることを理論的に示した。しかしながら、卵サイズと母親のサイズはしばしば相関するため、母親のサイズが卵サイズの制約になっているかどうか曖昧なままである。

チョウ目昆虫の1種ウラナミジャノメは、寄主植物であるイネ科草本が存在しなくとも産卵するので、寄主植物が卵サイズへ与える影響を排除することができる。そこで今回、本種を用いて母親のサイズが卵サイズに与える影響を調べた。本種の年2化個体群において、成虫の大きさは第1世代よりも第2世代のほうが小さかった。しかしながら、第1世代が産む卵よりも第2世代が産む卵のほうが大きかった。これは、卵サイズの季節変異が母親のサイズの季節変異と逆の傾向になることを示した初めての例である。卵サイズと孵化幼虫の頭幅には正の相関が見られたので、卵サイズは寄主植物(イネ科植物の葉の硬さ)へ適応するために決まっているのだろう。また、第1世代の卵サイズは母親のサイズと有意な相関が見られなかった一方で、第2世代では正の相関が見られた。つまり、小さな卵を産めばよい第1世代では卵サイズは母親のサイズの制約を受けないものの、体サイズが小さいにも関わらず大きな卵を産まなければならない第2世代では、制約が存在することが示唆された。

日本生態学会