| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-184
トウキョウダルマガエル成体は水辺をほとんど離れず生活し,繁殖期は水が溜まる水田での活動が多く見られ,非繁殖期は水田以外での水辺での活動も認められる。無尾類の多くの種は繁殖を池や低湿地(水田)で行い,非繁殖期を別の生息域で過ごすため,本種もフェノロジーに伴う季節的移動を行っていることが予想される。そこで本研究では,標識再捕獲法とテレメトリー法によって調査地(谷戸田)における本種の行動学的知見を得ることを目的とし,谷戸田における本種の空間利用法について考察する。
調査は2004年〜2007年の4年間,東京都町田市内の谷戸田で行った。生息地内での移動は腰バンドやマイクロチップによる個体識別を行い,標識再捕獲法を用いて評価した。非繁殖期の行動は成熟個体に電波発信機を装着しテレメトリー法による個体追跡を行った。
その結果,カエルは一定方向では無く様々な方向に移動していた。5月下旬になり水田に水が溜まり始める時期になると,休耕田の多い上流に生息する個体の一部が,水田耕作を行っている谷戸の下流方向に移動した。中干しによって水田の水が少なくなる時期になると,水が存在する水路や水の溜まっている上流での発見個体数が上昇するという結果となった。秋季に谷戸の上流で行った追跡調査ではカエルの移動距離は多様であり,移動日数に差はあったが多くの個体がこの時期に最も豊富な水量がある池に移動した。個体の一部は,休耕田間(休耕田の水溜まり)を行き来したが,池に放逐した個体は池から移動することは無かった。
標識再捕獲法とラジオテレメトリー法による個体追跡の結果は水環境の変化に伴うトウキョウダルマガエルの移動を支持する結果となり,本種は谷戸田における水田耕作の変化に対応して移動を行い,生息適地を選択していることが示唆された。