| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-188
北海道東部に生息するタンチョウ (Grus japonensis) は1900年代初頭に絶滅の危機に瀕し、個体数が減少したが、現在は冬期給餌等の保護活動により1,200羽(2007年1月)を超えるまで個体数は回復した。この個体群は大きな回帰移動を行わず、冬期はほとんどの餌を人工給餌に依存している。現在、越冬期に100羽以上の個体が集まる大給餌場は4ヶ所で、それ以外にも数羽から数十羽集まる小給餌場が数多く存在する。こうした小給餌場利用個体群では、幼鳥連れ家族の割合が大給餌場利用個体群より高く、その理由として、干渉が少ないため育児に有利と想像されている。しかし、この推測に対して、これまで実証的研究は行なわれていない。
そのため本研究では、数番いが集まる小給餌場において、タンチョウの行動の時間配分を記録することにより、番いや成鳥・幼鳥による行動の量的違いを明らかにし、大給餌場におけるそれとの比較を行なう基礎資料入手を目的とした。大給餌場では、餌となるデントコーンを雪上一面に広く撒くが、釧路湿原東部にあるJR無人駅付近の給餌場では、小さな餌箱にデントコーンを入れて与えている。そのため、複数番いが同時に給餌場に存在すると、その間で餌場を巡る争いが起き、番い間干渉が明確に捉えられる。そこで、給餌場に飛来してから飛び去るまでを、終日ビデオカメラで撮影し、映像記録をもとに個体毎の行動(採餌・注目・羽繕い・休息・威嚇等)の時間配分や回数を解析した。それにより、4番い(成鳥2羽幼鳥2羽の1家族、成鳥2羽幼鳥1羽の2家族、成鳥2羽の1番い)がこの給餌場を利用し、成鳥2羽幼鳥2羽の家族が餌場を巡る争いで最も優位であることが明らかとなった。また、番い間に順位が存在するため、給餌場における行動の時間配分に番い間、雌雄間、成鳥と幼鳥間、並びに個体間で違いが明確であった。