| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-197

カメムシ類幼虫は脚長を寄主探索に対応させる

*中嶋祐二(京大院農・昆虫生態), 藤崎憲治

昆虫にとっての最適産卵場所とは、卵の生存率と孵化幼虫の生存率の積を最大にする場所となる。植食性昆虫の場合、幼虫の生存を考えると最適産卵場所は食草上のみになりそうだが、そうならないことも多い。例えば、マメ科作物の重要害虫であるホソヘリカメムシや、ナス科およびヒルガオ科植物を吸汁加害するホオズキカメムシでは、一見適応的とは思われない食草外産卵という産卵行動を高頻度で示す。この産卵行動の適応的意義については、卵寄生蜂からの寄生回避仮説が有力である(Leal et al. 1995)。しかしながら、メスが食草外に産卵した場合、孵化幼虫には食草探索の必要が生じるため、食草到達の効率を高める形質が進化していると考えられる。今回は歩行の能力に関係すると思われる脚長に注目し、メスの産卵場所および幼虫の摂食開始期との関連性を考察した。

材料として上記した2種の他、比較のためにホソヘリカメムシと同科のクモヘリカメムシ、ホオズキカメムシと同科のツマキヘリカメムシおよびハラビロヘリカメムシという、植食性カメムシ5種を用いた。脚長は、幼虫の齢期ごとに前胸幅に対する脚の相対長を求め、脚の相対成長パターンで示した。その結果、大きく分けて2つのパターンが見られた。それは脚の相対長が2齢期で最長となるパターンとならないパターンである。前者には、メスが食草外産卵を行い、摂食開始期が2齢期であるホソヘリカメムシとホオズキカメムシ、また生態がよく知られていないハラビロヘリカメムシが含まれた。後者には、特に食草探索の必要がないクモヘリカメムシとツマキヘリカメムシが含まれた。

つまり、メスの食草外産卵という産卵習性のために、幼虫期に食草探索の必要が生じる種では、その摂食開始期に対応した脚の相対成長パターンを持つことが示唆された。

日本生態学会