| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-198
島に渡り新しく形成された種は、厳しい選好性を失うという説(Kaneshiro 1976)がある。それに対し、新しく形成された種はより厳しい選好性を持つというまったく逆の説(Watanabe and Kawanishi 1979)もある。これらの研究には多くの求愛行動をもつショウジョウバエが用いられたが、その後、これらの説に関する研究はなされていない。
コオロギにも特徴的な求愛行動があり、なかでもCalling songは種特異的であり、交配前隔離に大きな役割を果たしていると考えられている。これまで、コオロギのCalling songのどの要素にメスが選好性を示すかが研究され、大きな音を出している、音の密度が高いなど、よりコストのかかる音に選好性を示すことが示されてきた。これは、より質の高いオスを選択していると考えられている。
日本産エンマコオロギ属は4種おり、そのうち3種は本土に分布しているが、残り1種は小笠原の固有種である。今回、この小笠原固有種であるムニンエンマコオロギを用いて音声選択実験を行い、ムニンエンマコオロギのメスがCalling songのどの要素に選好性を示すかを調べた。実験には、ムニンエンマコオロギのオスのCalling songをもとに、音の大きさのみを変えたもの、Calling songに含まれる要素を変化させたものを用いた。その結果、ムニンエンマコオロギのメスは、音の大きさには選好性を示すが、構造を変化させても選好性が失われることはなかった。
この結果から、メスは質の高いオスを選択しようとしているわけではなく、できるだけ距離の近いオスと交配しようとすることが明らかとなった。これはKaneshiroを支持する結果であると考えられる。