| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-204
昼行性の蛾類であるカノコガ(Amata fortunei)は、早朝に配偶行動を行うことが観察されている。雌は腹端から性フェロモンを放出し雄を誘引するが、本種は昼行性であるため、雄による雌の探索には、性フェロモン以外に視覚的な刺激(雌の体色など)を利用している可能性がある。
カノコガとキハダカノコ(A. germana)、ムラマツカノコ(Syntomoides imaon)とツマキカノコ(A. flava)はそれぞれ同所的に生息している。しかし、同所的に生息している2種間の体色は大きく異なっている。カノコガとムラマツカノコは腹部第一節と第五節に黄色い縞があり、第二節から第四節の側面に黄色い斑紋がある(黒タイプ)。一方、キハダカノコとツマキカノコは腹部第一節から第七節までのすべてにオレンジ色の縞がある(黄タイプ)。本研究では体色パターンがカノコガの雄の配偶行動に与える影響を検証した
風洞内で、カノコガ雌のフェロモン腺のヘキサン抽出物に4種の雌の冷凍標本を個別に付帯させて、カノコガ雄の行動を観察した。抽出物+標本に対する行動をカノコガ雌に対する行動と比較した結果、黒タイプでは差は見られなかったが、黄タイプは交尾行動まで至らないことが分かった。さらに、カノコガ雌の冷凍標本に黄色い縞を加筆あるいは消去したものを用いて同様の実験を行った。その結果、縞が少ない標本はカノコガの雌に対する反応と差は見られなかった。一方、縞が増えるにしたがって、標本に対して結合試行する雄が減少する傾向が見られた。本種の雄は長距離では性フェロモンを、至近距離(15 cm以内)では嗅覚と視覚の両方を利用して雌に定位すると考えられた。