| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-205
宮城県金華山島の野生ニホンザルを対象に、群れの空間的な広がりの変異を3シーズンに渡って調査した。2〜3名の観察者が、それぞれの対象個体を近くで追跡し、その位置をGPSで記録した。
2個体間の距離は、季節によって異なった。秋は最も短く、冬は中間的で、夏は最も長かった。個体間距離は季節内でも個体の活動によって変化した。それぞれの季節で、グルーミング時と休憩時には個体間距離が最も短く、採食時には中間的で、移動時には最も長かった。
2個体間の距離は、直後の個体間距離の変化にも影響していた。すなわち、2個体間の距離が大きく離れると、直後に近づく傾向があった。このことは、ニホンザルがグループとしてまとまる傾向があることを示していると考えられる。
季節差を生み出す要因として、移動の仕方(移動速度と移動の同調性)、活動時間配分(グルーミング、休憩、採食、移動の時間割合)、食物タイプ(樹木、低木、草本、ツル植物、キノコ類)が挙げられる。それぞれを季節ごとに検討したところ、いずれの要因でも、群れの広がりの季節差と一致する結果が得られた。
これらの結果は、群れの空間的な広がりは、季節間でも季節内でも大きな変異があることを示している。季節内でみると、群れの広がりはニホンザルの活動に伴って、凝集と分散を繰り返しているようだ。また、群れの広がりと関連の深い活動は季節によっても異なり、季節による変異を生み出していると考えられる。