| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-209
アリやミツバチなどの社会においてワーカーは交尾能力を持たず、ふつうワーカーが産んだ卵は半数体の雄にしかなれなれない(半倍数性)。一方、一部の種に見られる、雌(二倍体)を産むことのできる単為生殖(産雌性単為生殖)は、ワーカーと女王の双方に新たな利己的行動のオプションを与えるため、社会寄生・利己性の進化に繋がる可能性が理論的に指摘されている。
ワーカー(通常型)の産雌性単為生殖による共同繁殖社会を形成しているアミメアリ(Pristomyrmex punctatus)には、大型で単眼や倍化した卵巣を持つ「単眼大型ワーカー」がコロニー内に混在している個体群がある。三重県紀北町の個体群では、単眼大型は育仔や採餌活動は行わないなど「社会寄生」的な特徴を持ち、通常型とは遺伝的に異なる系統であることが知られている。
本研究では産雌性単為生殖アリにおいて社会寄生者が進化しやすいことを1事例で示すため、この種の社会寄生形質が種内において複数回独立に進化していることを明らかにする。全国的な野外調査により、単眼大型は複数地域から散在して発見された。これらの単眼大型、及び通常型に関して分子系統解析を行うと、本土のアミメアリの系統は大きく2つに分かれ、両方のクレードに単眼大型が属することが分かった。また各々の系統に属する単眼大型について行動解析を行ったところ、「働かない、頻繁に産卵する」などの共通した社会寄生性質を持つ一方で、行動と形態に関していくつかの相違点も存在した。この結果は、単眼大型は両系統で社会寄生者として少なくとも2回独立に進化している可能性が高いことを示している。これらの現象が生じた要因について考察する。