| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-211

アマミシロアリとミヤタケシロアリの種間交雑によるコロニー創設

*巽真悟,松浦健二,矢代敏久(岡山大院・環境)

社会性昆虫において、コロニー内の高い血縁度は集団の統一性の維持に不可欠である。しかし、血縁選択の考えに基づくとコロニーにとってコストになるはずである遺伝的多様性の増加をもたらす現象が維持されている。これは、コロニー内の遺伝的多様性が増し、異なる系統の病原体に対して感受性の低い様々なタイプの個体が存在することで、病原体のコロニー全体への致命的な感染を抑制するであろうからだと考えられている。

ヤマトシロアリ属の近縁種であるアマミシロアリ(R.a)とミヤタケシロアリ(R.m)は鹿児島県奄美大島に同所的に分布している。両種は有翅虫の群飛をほぼ同時期に行い、朽木にコロニーを創設する。さらに両種は実験室内において種間交雑が可能である。これを利用して、種間交雑コロニー創設による遺伝的に異なる個体の存在が、コロニーの生存率を高めるかを検証した。

R.a、R.mの有翅虫を用いてコロニーを創設させ、3ヵ月後の生存率を種間交雑創設と種内創設で比較した。2006年時には、種間交雑コロニーの生存率が、R.m同種ペア創設コロニーと比較して有意に高かった。2007年に再び行ったところ、いずれの組み合わせにおいても生存率に有意な差はみられなかった。これらのことから考察すると、特異的な病原体がコロニー内に侵入した場合、それに対する感受性が低い遺伝的に異なる個体が存在することで、感受性の高い個体への感染を抑止し、コロニー全体への伝染が低減される可能性が示唆された。

併せて、種間交雑で生まれた職蟻、兵蟻の形態計測の結果についても報告する。

日本生態学会