| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-216
社会性昆虫には様々な役割をもつカストが存在する。カンモンシロアリReticulitermes kanmonensisが属するヤマトシロアリ属の場合は、卵が成長するにつれ、「ニンフ」か「ワーカー」に分化する。初期コロニーでは、通常有翅虫の雌雄がペアとなり交配を行う。このような小さなコロニーにはニンフは存在せず、生まれた子はワーカーへと分化する。
ヤマトシロアリでは親生殖虫のカストが、「ワーカー由来」か「ニンフ由来」かによって、子が「ニンフ」または「ワーカー」へ分化する割合に違いが出る可能性がある(Hayashi et al. 2007)。同様の結果は本種においても確かめられている(Kitade et al. 未発表)。本研究では、「ニンフ由来」の有翅虫を除去することで「ワーカー由来」の生殖虫を出現させ、親生殖虫の違いによって子のカストの割合や性比が変化するかを調べた。
まず、カンモンシロアリの有翅虫を交配させ、初期コロニーを作成した。次に、雌雄の片方または両方の有翅虫を除去し、ワーカー型生殖虫を出現させて親生殖虫にした。親生殖虫の組み合わせは、有翅虫メスと有翅虫オス(コントロール)、有翅虫メスとワーカー型生殖虫オス、ワーカー型生殖虫メスと有翅虫オス、ワーカー型生殖虫メスとワーカー生殖虫オスの4通りである。そして、1ヶ月ごとにワーカー型生殖虫の個体数、子のカスト・性比などを中心にコロニーの構成を調べた。
実験の結果、全ての組み合わせで生まれてきた子はワーカーのみに分化し、性比はメスワーカー:オスワーカー=約1:1であった。また、ワーカー型生殖虫はオスよりメスのほうが多く出現した。
子がワーカーのみであるのは、親と共に飼育したために、親が出すフェロモンなどの影響によってニンフになる個体がワーカーに誘導されたのではないかと考えられる。