| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-221
里山を構成する雑木林の標徴種の一つとなっているラン科キンラン属のギンラン(Cephalanthera erecta)は、大規模な都市開発などにより1960年代後半からその生育地である雑木林の減少、さらには園芸目的の乱獲により個体数は激減、現在では稀少種となってしまった。キンラン属植物には樹木の得た無機栄養分を、菌根菌を通して自己の体内に取り込むという三者間での共生関係があり、菌根菌からの供給なしでは十分な生育がなされないと考えられている。そのような生態的特性から新たな土地に個体を移植して増殖させることが極めて難しく、稀少種となったギンランの生育地内保全技術の確立が急務となっている。そこで本研究はギンランの生育に及ぼす菌根菌の役割について定量的に明らかにすることを目的として行った。
本調査は東京都立川市にある国営昭和記念公園内のギンラン群生地に1m×2mから1m×7mの調査枠を7ヶ所設け、枠内に生育する全194個体を対象に2006年4月から2007年6月にかけて地上部の個体調査を行った。次に2006年と2007年に得られた個体サイズから作成した散布図に基づいて調査個体を代表する23個体を掘り取った。掘り取った総ての個体について2cm間隔を基本として根部の切片を作成、顕微鏡下に見られる菌根菌組織の占める割合を4段階で評価し計測した。また掘り取った個体周辺においてギンランの成長に影響を及ぼすと考えられた土壌の水分、硬度、pH、及び相対照度を計測した。以上の結果よりギンランの根に存在する菌根菌は、ギンランの生育にかなりの影響を及ぼしていることが判明した。