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一般講演(ポスター発表) P1-225
京都府から大阪平野を流れる淀川には「わんど」と呼ばれる連続的な人工の入り江がある。わんどではイシガイやドブガイなどのイシガイ科二枚貝が高密度に生息する。イシガイ類はグロキディウム幼生期に魚類の体表に寄生するという生活史をもち、寄生に適した魚類の存在なしにイシガイ類の個体群維持はありえない。しかし近年、淀川では外来魚の侵入で在来魚の密度が著しく低下しており、イシガイ類の繁殖に負の影響を及ぼしていることが懸念される。
そこで、イシガイ類の繁殖にとって現在の淀川わんど域の魚類相が好適かどうかを推測するため、魚種ごとのグロキディウム幼生の寄主利用状況と幼生の生存率を調べた。調査は2007年3月〜10月に城北35号新設および赤川わんどで行い、イシガイ類成貝の密度と魚類相・密度、ならびに採集した魚類から幼生の寄生の有無と成長状況を調べた。
その結果、わんど内では密度の高い順にイシガイ、ドブガイ、トンガリササノハガイが生息していた。採集された魚類21種のうち外来種は6種、個体数でみるとオオクチバスとブルーギルだけで期間中8%〜96%を占めていた。イシガイの幼生は少なくとも12種、ドブガイは同じく10種の魚類から見いだされた。イシガイが最も多く利用していたのはオオクチバスとブルーギルと推定されたが、それらに寄生した幼生のほとんどは成長が停止するか死亡していた。一方、ドブガイではほとんどの魚種で成長の進んだ幼生が見られた。
これらから、特にイシガイは寄主選好性が強いにも関わらず寄主として適さない外来魚を利用しており、産卵数に対する幼生生存率は著しく低下していると推定される。この結果から、近い将来わんど域のイシガイ個体群が壊滅する可能性も否定できず、外来魚優占の現状に対して何らかの対策が必要だと考えられる。