| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-227

中国地域における絶滅危惧植物の分布と生育地の重要性評価

堤 道生(近中四農研),白川勝信(芸北高原の自然館),太田陽子(北九州自然史・歴史博物館),井上雅仁(三瓶自然館),渡邉園子,兼子伸吾(広島大),佐久間智子(中外テクノス),高橋佳孝(近中四農研)

中国地域5県の県版レッドデータブックに掲載されている維管束植物の絶滅危惧指定種(以下,絶滅危惧植物)の生育地を「森林」,「農地」,「湿地」,「岩石地」,「半自然草地(野草地)」および「海浜」に分類し,各生育地の生物多様性保全上の重要性評価を試みた.まず,各生育地の絶滅危惧植物,および特定の生育地のみに依存して生育する種(以下,依存種)の数を算出した.さらに,これらの生育地面積(km2)あたりの値を算出し,評価の指標とした.絶滅危惧植物の種数は森林(762)で最も多く,次いで農地(332),湿地(306),岩石地(301),半自然草地(272)と続き,海浜(207)で最も少なかった.依存種の含まれる割合は森林(54.9%)と湿地(43.5%)で高く,半自然草地(18.4%),岩石地(17.9%),海浜(15.9%)と続き,農地(6.9%)で低かった.面積あたりの絶滅危惧植物種数は,生育地面積の著しく小さい岩石地を除くと,半自然草地(1.14)で最も高い値を示し,海浜(0.98),湿地(0.59),農地(0.06),森林(0.03)の順に続いた.面積あたりの依存種数は,同様に岩石地を除き,湿地(0.26),半自然草地(0.21),海浜(0.16),森林(0.02)の順で多く,農地では0.01種未満であった.以上の結果より,中国地域5県における絶滅危惧植物保全上での重要性は半自然草地で最も高く,湿地や海浜がこれに次ぐことが示された.また,各県ごとの結果から,半自然草地の重要性は山口県,鳥取県,島根県で特に高いことが明らかとなった.

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