| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-233

群馬県内の里山で新たに確認されたヒメアマナ群生地における鱗茎サイズと開花数の関係

*石川真一(群馬大・社会情報), 増田和明(群馬県中之条小学校), 大森威宏(群馬県立自然史博物館)

2007年春、群馬県内の里山(保護上の理由により、地名を秘匿する)において、ヒメアマナ(絶滅危惧IB類)の群生地が新たに確認された。ヒメアマナは典型的なスプリング・エフェメラルで、地上部生育期間は非常に短い。当調査地においては4月末-5月初旬の短期間に、開花個体・非開花個体数の調査を行うことができた。その結果、ヒメアマナは小さな渓流沿いから比高約1mほど上がったテラス状のコナラ植林地の林床にのみ生育し、幅約10m×長さ約200mほどの調査地内に推定開花個体6000、推定非開花個体7万、合計7.6万個体からなる巨大個体群が成立していることが判明した。このうち27個体を丁寧に堀り上げて、鱗茎サイズ(長径と短径)および開花数を測定した後、植え戻した。鱗茎サイズインデックス(鱗茎の長径と短径の積)を指標としてその開花数との関係を見たところ、25mm2(長径で6.5mm)付近を限界サイズとして、インデックスと開花数の間に強い正の相関があることが確認された。またこの限界サイズ以下の個体では開花は見られず、開花個体においては、結実は確認できなかった。ヒメアマナは娘鱗茎を生産して無性繁殖を行うが、鱗茎サイズインデックスと娘鱗茎数の間には有意な相関関係は見られなかった。ただし、インデックス9mm2(長径で5mm)以下の個体では、娘鱗茎の生産は見られなかった。以上より当調査地において、ヒメアマナは主として栄養繁殖により個体群を維持・拡大している可能性が示唆された。当調査地では盛んにコナラの植林が行われ、また渓流をコンクリート側溝で整備する工事が進んでいるため、早急な保全対策が不可欠である。

日本生態学会