| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-234
河川域には、低水位時にワンドと呼ばれる止水域が出現する。ワンドは、増水時に網状になった流路が水位低下後に本川から取り残されて形成されるものであり、季節的な水位変動は大きいものの、平常時の水位変動は非常に緩やかである。また、すり鉢状の起伏に富んだ地形と、伏流水の湧出によって、多様な水分環境が維持されている。このような複雑な環境を創出するワンドは、定常的に流水攪乱を受ける場所や、本川から離れた水分の乏しい環境に比べ、植物が定着しやすく、植物種多様性が高いと推測される。本研究では、ワンドとそれ以外の河川環境における植物種の分布特性を比較することによって、ワンドが河川域の植物種多様性の維持に果たす役割を明らかにする。
調査地は、新潟県五泉市の早出川である。河道の両岸にある2ヶ所のワンドと、それらの周辺から相観植生の異なる5タイプ・6サイトを選んだ。各サイトには20mの植生調査ラインを2〜5本設置し、1ラインにつき1m×1mのコドラートを20個設けた。各コドラートでは、出現した全植物種の種名を記録するとともに、表層土壌を採取し、粒径で5区分に分類した。さらに、各ラインでレベル測量(全コドラート)・高精度GPS標高測量(2地点)を行い、各コドラートの標高を求めた。
その結果、各サイトの種数-面積曲線からは、ワンドの持つ潜在的な種の豊かさが示唆された。また、ロジスティック回帰分析の結果、出現した多くの植物種に対して、生息地がワンドであるか否かの要因が大きく影響していることが示された。ワンドの環境特性がなぜ植物種多様性に寄与しうるのかを、植物種の生活史特性と関連づけて考察し、植物種多様性のホットスポットとしてのワンドの機能を評価する。