| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-236

デジタル航空写真を用いた渡良瀬遊水池の植生状態の把握

*武田知己(国環研),小熊宏之(国環研),石濱史子(国環研),竹中明夫(国環研)

本研究では、渡良瀬遊水池に生育する絶滅危惧種の分布の推定や小動物の生息域の把握を目的とし、デジタル航空写真を用いた上層植生の草丈分布の推定手法を検討した。

デジタル航空写真による草丈(ha)の推定には、航空機搭載型マルチラインセンサ(ADS40, Leica Geosystems)で得られる前方視、直下視、後方視のパンクロマチック画像を立体視したデジタル表面高モデル(DSM、Digital Surface Model)を使用した。撮影は、野焼き直後で地表が露出している2006年4月1日と2007年4月21日、および草丈がほぼ最大高に達した2006年8月5日に行い、各時期のDSMの差分から草丈(ha)を計算した。航空機測定と同期して、2006年7月13日と8月1日の2回、地上で草丈(hg)と葉群密度の垂直分布の測定を行った。草丈(hg)は一番高い位置にある葉の先端の高さとし、測高ポールで測定した。葉群密度の垂直分布は、群落内で光量子計(LI-190, Li-Cor)を高さ方向に移動させながら光強度の垂直分布を測定することで求めた。地上での測定は14地点で行い、各地点で植物種とともに座標をGPS(ProXT, Trimble)で記録し、デジタル航空写真と重ねあわせることで草丈(ha)の推定精度を検証した。

デジタル航空写真で推定した草丈と地上で測定した草丈を比較した結果、草丈(ha)は草丈(hg)よりも1m程度低く推定されていたが、両者の間には高い相関が見られた(r2=0.89)。一方、草丈(ha)と葉群密度が最大となる高さはほぼ等しく、相関も高かった(r2=0.91)。このことから、デジタル航空写真で取得されるDSMは葉の先端の高さではなく、葉が最も密に分布する高さを検出している事が分かった。

日本生態学会