| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-237
現在、日本の里地里山には、多くの絶滅危惧種が生息していることが知られている。生物多様性保全の観点から、里山環境の保全は急務であるといえる。しかし、里山の面積は広大なものであり、その全てを対象に保全活動を進めていくことは現実的でない。里山の中でも、どのような環境に生物多様性が集中しているのかを明らかにすれば、保全活動を効率的に進めることができるだろう。本研究では、絶滅が危惧されている草原性植物がどのような環境を好んで生育しているのか明らかにすることを目的とした。対象はガガイモ科カモメヅル属のスズサイコとタチカモメヅルの2種とし、その分布を比較した。両種はともに草原性植物であるが希少さには差があり、この2種を比較することで前述の環境を探ることができる。
実地調査は両種の開花期にあたる夏(2007年7-8月)に行った。兵庫県宝塚市北部(2.5km×6km)の田畑の畦畔においてラインセンサス法で両種の有無を確認した。環境要因として標高,斜面方位,TWI,圃場整備の有無,ため池からの距離をGISにより算出して説明変数とし、それぞれの種の分布状況との関係を一般化線形モデルによって検討した。
その結果、両種の分布に対し働き方が共通していた要因は圃場整備とため池からの距離であった。圃場整備が行われた田畑の畦畔では両種はあまり生育せず、ため池からの距離が近いところに多く分布することが示された。圃場整備が行われると在来の植物が減少するということは知られているが、ため池から近いところに草原性植物が集中するという研究はあまり例がない。そこで、ため池が草原性の植物の生育を助けるメカニズムについて考察した。