| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-238

里山の管理再開に伴って起こること

倉本宣,野呂恵子,笹目菜月,榎本大輔(明治大学農学部)

新生物多様性国家戦略で里山の管理はアンダーユースであり、それが生物多様性を低下させていると指摘された。里山のアンダーユースに対する対応には大別すると3つのシナリオがあり、(1)管理水準を上げて、かつての里山に戻す、(2)現在、生育生息している絶滅危惧種等に対応した管理を継続する、(3)管理水準を下げて、遷移を進めるに分けられる。このうち、シナリオ(1)は管理にかかわる人手が多く、管理によって生産される有機物を消費する人口に恵まれている都市近郊で行なうことが適していると考えられる。

明治大学農場予定地のある神奈川県川崎市麻生区黒川は北には区画整理によって造られたはるひ野地区があり、北西には多摩ニュータウンが隣接しているので、シナリオ(1)に適した都市近郊に位置している。ここで、広義の里山の管理を再開したときに起こることを調査している。

黒川観光農業振興会の援助により放棄水田の一部を復田し、生物相の調査を行なっている。稲刈りの直前に、カヤネズミの営巣が確認された。カヤネズミは神奈川県では準絶滅危惧種に位置づけられているので、研究者は専門家に相談して、稲刈りを延期することにした。それは協力していただいている農家には理解できない対応であった。このカヤネズミの営巣を巡って起こったことを整理することを通して、里山の管理を再開したときに起こることを検討したい。

本研究には、黒川観光農業振興会、坂本正氏の援助と、黒田貴綱氏の指導を得たので、ここに記して感謝の意を表したい。

日本生態学会